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=第三夜= 一章 【四枚の葉書】

大昔の偉人の言葉をうろ覚えながら思い出してみる。

Subjectは「最も心から欲するもの」。

詩人ゲーテは「枯れない薔薇」、三国志の関羽は「義兄と共に死す事」、
クレオパトラは「若々しい美しさを保つ為の処女の血」・・・・
そしてDitaを呷りながら週末の出来事を思い出していた男は独り言のような小さな声で呟く。

「俺だったら・・・バーストしないタイヤだな・・・。」

ここまで読んで笑う者がいたら、それはタイヤを過信している者か、ある意味に於いてタイヤの限界を知らずして走っている者であろう。

男はタイヤについてある意味、無頓着であり、ある意味、過大な要求をする。雑誌のインプレ等、何の参考にもならない。もちろん一流のドライバーがサーキット等で使用し、素人にもわかる言葉を使って詳細にレポートする。その結果が正しい事は言う間でも無い。しかし、この男が知りたい情報などはひとつも無い。

排水性?磨耗度?・・So What ?

信じるのは、信頼する諸先輩方からのinputとadvice、そして実走行した結果のみ。

この男を含め、ある特殊な使い方をしている人種が確かに存在し、タイヤの保証規格外での使用をする世界が確かに存在する。

数年前?某有名ドライバーが、「車が路面に接触している面積は葉書4枚分です。」と宣伝していた。
当時は何気なく見過ごしていた単なるCMが、最近恐ろしいほど現実味を帯びてきている。

グラスに4杯目のDitaが氷と共に注がれる頃、男の頭には思い出したくも無い、恐怖と狂気に満ちた3つの悪夢が過り始めた。門外漢から見れば流すに止まる話も、当本人からすると、思い出すだけでも寝つけず、また考えるだけで700円を支払うのを躊躇うような悪夢。

「この一杯を飲んだら思い出してみるか・・。」

ここまで構えないと口にも出来ぬ出来事。
ただし、忘れてはいけないとも認識している事も確かだ。

精神的にもメンテナンスと言う意味でも、細心の注意を心掛けてこそ、あの気の遠くなるような直線を駆け抜ける事が出来る・・はずだ。

しかし、それでも予知不能な事態は起こり得るし、実際に踏んでいる最中にそこまで車の一挙手一投足に気を配る事は出来ない・・・そして、自らが体験してきた湾岸での、あの速度域でのアクシデント。

タイヤは葉書4枚分の接地面積で・・・・そんな事はわかっているが・・・・・

「Force Majeure」・・・・アルコールが効いてきたみたいだ。

4杯目のグラスが空いた。


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